栗本先生へ 

2009, 05. 27 (Wed) 16:44

携帯のニュース配信で、栗本薫先生の訃報を知りました。
最初で最後の、栗本先生への手紙を書かせてくださいね。

以前、どこかに書いたのですが、私は先生と呼ばれるのが苦手で、同時に同業者様やイラストレーター様を先生と呼ぶのも苦手です。だからいつも、あとがき等では「様」で呼ばせていただいております。
でも、無意識に呼称を「先生」としてしまう方が、わずかですが、いらっしゃいます。
手塚治虫先生、永井豪先生。そして栗本薫先生です。
一度もお会いすることはなく、勝手に憧れ、一方的に師と仰いでいた時期がありました。

栗本先生の作品との出逢いは、三重県の、四日市駅前の商店街にある本屋さんでした。
初めての作家さん。デビュー作らしい。江戸川乱歩賞? 推理小説? 難しそうだな。でも、表紙の絵が可愛いな。「ぼくらの時代」というタイトルも。
戸惑いと期待に揺れて本を持ちあげた瞬間の、ツルツルとした意外な手触り。どうしてこんなにはっきり覚えているのか、不思議でなりません。
勝手に「私の未来を変えた出逢い」であり、「運命」だったと思いこんでいます。
同性愛という言葉を知らなかった当時の私は、ミステリの作中に登場する三人の男性の仲むつまじさに、訳もわからずドキドキしました。ストーリーの展開の速さに、推理小説って面白い! と唸りました。何度も読んで紙がクタクタになり、文庫化されたときはすぐに買い直し、読みふけりました。
「心中天浦島」も「ぼくらの時代」同様、いまも大切に書棚に収めてあります。

それから何年が過ぎたのか。まったく本を読まない時代が長く続いてしまいました。
それでも大人になって再び、私は引き寄せられました。「終わりのないラブソング」にです。
このとき初めて、Juneの存在を知りました。

小説なんて書いたことすらなかったのに、小説道場に投稿しました。
でも、私がJuneに投稿を始めたころに小説道場が終わってしまい、一度もご教授いただけませんでした。残念でならなかったのですが、雲の上の人だと最初からわかっておりましたので、嘆くことも落ち込むこともなく…でも少し寂しかったのを覚えています。
それでもとにかく、栗本先生の「ぼくらの時代」に出会ったことが、私がこの道に進むスタートでもあったんじゃないかと、いまも思います。

ちょうど小説ピアスが休刊になったころ、汚い、ぐろいと酷評され、「BLを書いているという意識がない」とのメールが届き、思考を文字にするこの仕事が怖くなり、ここは私のような思考の人間が居てはいけない場所なんだと、辞めることばかり考えていた時期がありました。
そんなとき、初めて訪れた栗本先生のHP…日記で、私の名を見つけたのです。
大好きですよ、と書いてくださいましたね。
そして、「表現のシバリは、小説の死に等しい」と、断言されていらっしゃいましたね。
涙が溢れました。小説は自由であるべきだとの言葉に何度も頭を下げ、手を合わせました。
まわりから外れた表現でも、理解してくれる人はきっといる。やっと、それを信じられるようになりしまた。
そしてなにより、私という存在を知ってくださっていたことの嬉しさ。
おそらく「ホタル」の発売時に、一冊だけサインをしたあの本が、栗本先生の手元に届けられていたのだと気づいた感動。
いま、感謝で涙が止まりません。

支えられ、励まされてきました。覚束ない私の足元を照らしてくださいました。
こんなにも、授けていただきました。
ありがとうございました。どうか、安らかにお眠りください。
心からご冥福をお祈りします。
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コメント

jin

皆様へ

いつも…ななしですさん>初めまして…ですよね? コメントありがとうございます。
これからも作品を出していくことが追悼になるとの言葉に、なにかしらの新たな決心を分けていただいた思いがします。
ただ発行して終わりではなく、栗本先生にも読んでいただきたいと思えるような作品を残していけるように。堂々と、お届けできるように。
書いていきます。ありがとうございます。

もーちゃんさん>届いていますかね……届いているといいな。ありがとう。
マイナス思考の私なんかとは対極にあられる栗本先生の爪の垢を、少しでも分けていただけたらいいのですが…。
栗本先生って、きっと天界でも精力的に執筆されていらっしゃる気がしませんか(笑)?
ありがとうございます。

パパ~ンさん>お久しぶりですね。お元気でしたか?
言葉って、計り知れない威力がありますよね。とても怖いです。返される言葉を聞きたくないあまり、もう自分から黙ってしまうときが、よくあります。
でも、人は生きていても死しても尚、人になにかを伝えている。意図しないことまで、想像力という勝手な力で伝えられていってしまう。
声という「音」にしなくても、一瞬の視線や、PC越しの文章でも。
一冊の書物でも。
どんなふうに生きたか。どんな自分でありたいか。栗本先生のように、自分が自分らしく生きるにはどう進むべきかを認識して、自分のやりたいことをを誤魔化すことなく毎日を謳歌できたら、大満足の人生だろうな…。
ありがとうございます。

たまこさん>十代、二十代…その年代のあちこちに、栗本先生から分けていただいた楽しい時間が隠れているのですね。
嬉しいな。私も一緒ですよ。自分の過去を振り返ると、やはりそこには栗本先生の作品が、大切な分岐点あたりに、ちょこん…というより、ドンッ(笑)と置かれているのです。
これからは、拙作「ホタル」を開くたび、栗本先生を身近に感じられる喜びに酔えそうです。
それは、まさか文章を書く仕事に就くなどとは想像もし得なかった二十代のころの私からすれば、驚くべきサプライズであり、最高の栄誉でもあるのです。
頑張れそうです。
ありがとうございます。

栗本先生。
作品だけに留まらない感動も、教訓も。
たくさんご教授いただきました。
これから先、くじけることが…私の場合、きっと何度もあると思われます。
そんなときは、先生がこの世に残してくださった諸々の集大成を紐解きながら、自分自身の足場を組み立て直し、再び歩き出せるように。
強くなりたいと思います。
ありがとうございました。

2009/06/10 (Wed) 11:35 | jin | 編集 | 返信

たまこ

先生の手紙、そしてファンの皆さんの思いはきっと届いていると思います

 栗本先生の作品を読む時間と幸福がなかったら、ちゃんとあの自意識過剰で現実に立ち向かう力が未熟だった十代、二十代のころをのりきることができただろうか…と、今も思います。
 一冊の本で、映画を十本以上観たかのような濃密な時間を持てました。文字から作品世界がわきあがってきて、わたしを包むのです。映像体験といってもいいほど、イメージが鮮明に浮かんで心の奥底まで揺さぶられます。
 そして、栗本先生の作品中にある言葉で、わたしは何度も何度も励まされてきました。今でもつらいときに思い出す言葉があります。
 わたしも先生のお手紙は届いていると思います。
 こうやって書かれたファンの皆さんの思いも、胸の内にかけめぐる思いも。
 栗本先生のご冥福をお祈りしています。

2009/06/04 (Thu) 10:57 | たまこ | 編集 | 返信

パパ~ン

手紙を拝見し
たった一言の言葉が
何気ない一言が
人の人生までも左右する事の
恐ろしさと
素晴らしさの
両方を感じました。

栗本薫先生、
ありがとうございます
そして、お疲れ様でした
ご冥福を心よりお祈りいたします。

2009/06/03 (Wed) 17:44 | パパ~ン | 編集 | 返信

もーちゃん

素敵な、お手紙です。きっと 届いてますよ。
栗本せんせいのおかげで jinせんせいの今があるといっても過言ではありませんね。辞めるとばかり考えていらっしゃった頃に 励ましていただいて…
ご冥福を お祈りいたします。

2009/05/31 (Sun) 23:50 | もーちゃん | 編集 | 返信

いつも…ななしです

ラブソングを

私も忘れません。小説道場の門弟の方々同様に心痛め冥福を祈る信望者は沢山いらっしゃり今のボーイズとやおいは別物と考えて、これからも作品を出されることが栗本薫先生の追悼になるように思います。ボーイズはボーイズとして耽美やおいはやおいとして表現の自由を貫いてくださいね。病に負けない強い力で生き抜かれて天人となられた栗本薫先生に届けてください。書くために生まれ後進を育て見守ってくださった栗本薫先生のご冥福を一緒に祈ります。

2009/05/29 (Fri) 14:13 | いつも…ななしです | 編集 | 返信

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